Hokkaido style (JPN/ENG)

   おしゃれな保護帽―アボネット

北海道の札幌や帯広にはファッションのアンテナショップが置かれているとしばしば聞いた。アパレルメーカーの新製品の売れ行き動向が注目される地域の一つであるらしい。
たしかに札幌は日常的にファショナブルな比較的若い層や、年代を問わずおしゃれな人たちが多いと感じる。首都圏の雑踏より、適度な空間の中でおしゃれな人たちに目が留まりやすいこともある。
本州の他の北国と言われる街から、札幌や帯広を訪れると、「服装が冬でも彩りがあって、スカートをはく人もいておしゃれね」と感心される。「道が凍り付くと、都市部でも冬の間の服装は上下とも黒々として、寒さを凌ぐことで精一杯になるのが普通だけれど」。

札幌では、私がもともと好きだった帽子が、ファッションのなかで存在感があることがとても気に入っていた。雪が降る中を歩くとき、スキーやウィンタースポーツ、アウトドアのイベント、夏の陽ざしを遮るという目的のためだけでなく、日常の必需品として帽子が身近にあることは、帽子やさんや、売り場の帽子コーナーを見るだけでも楽しみが増えた。
その帽子にまつわる、おしゃれなセンスに期待した札幌での出来事があった。
冬の道路で人が転倒する危険な状況を解決できる方法は、地下街の拡大やロードヒーティングが進められてきたが、インフラ整備にはまだまだ膨大な経費と時間がかかる。冬道での転倒防止のために、凍結した道路の歩き方や滑り止めの靴や付属品など改善はされるが決定打はないに等しいと私には思える。砂箱というのもある。交差点に置かれていて、道路を渡るときに中の滑り止めの粉末を各自取り出して、道路に撒いてから渡るというアイディアだが、万策尽き果てたという感がある。なぜなら、その粉末は黒かグレーで、札幌自慢の白い冬景色を汚しながら安全を手に入れるという情けなさを味わうからだ。
私がちょっとした油断から、派手に転倒して翌日も頭がふらつくので、病院で検査を受けたときだった。札幌市は2000年ごろから、転倒から頭を保護する帽子、「アボネット」の開発に取り組んできた。それは3年、5年と継続し、製品化を目指しているという話を耳にした。頭部の安全や保護を目的としながらも、ファション性も取り入れて、普段使いもできるような帽子がほしいという消費者の声が根強いそうだ。さすが札幌市民は真冬でも帽子のおしゃれに気遣うのだ。ついでのときに札幌市役所で聞いてみると、ちょうどデザイン専門学校の学生と帽子のつばにフリルが入れられないか、パターンを考案中だった。ただし札幌市という自治体が、アボネット開発の事業主なので、できるかぎり地元の専門学校、研究機関やデザイン会社と協力し、地元から材料の調達などをしたいという制約もあってまだまだ時間がかかりそうだった。
それから間もなくして、北海道新聞に札幌市開発の保護帽、「アボネット」の試作品が登場した。当時は女性用と男性用というイメージで分けて、完成した男性用だけが写真付きで掲載された。モデルは市長さんで、市を挙げて取り組んでいるという意気込みだったのだろう。ひいき目に見ても、これまで見慣れた工事現場の安全帽とあまり変わらない雰囲気で、その写真を見て私は大きく挫折したのだが、未完成らしい女性用は安全性とファッション性を兼ね備えた製品が期待できるかもしれない。「アボネット」のその後は依然として気がかりだった。
開発から20年が経過し、思い出すことも稀になっていたこの頃、突然「ファションについて」書くことになった。そこで「アボネット」を追跡調査してみると、嬉しいことにアボネットは消滅しないで存命だった。ただ「ファッションについて」というテーマにふさわしい題材かどうかは、やや疑問が残るのだが。アボネットはファッション性を追求しようとしたにもかかわらず、機能性や実利性、とくに介護現場や様々な転倒や危険からの安全防止のためのヘルメットの要素も捨てきれない。市民や観光客のすべての目的が共存するかたちとして、現在も改良を試行錯誤中のようであった。それでも必要であれば、北海道の帽子専門店やデパートで入手できるうえ、さらに楽天市場やAMAZONで、他の類似目的の国内外の安全帽と競い合っていた。
今では札幌の保護帽は、見た目のおしゃれや流行よりも、高齢化や介護、危険がいっぱいの道路事情、道路より危険なスキーとスノボーが交差する雪山など、様々な要望に応えようとしている有様が窺える。
何か予想できないを先端的デザインをあきらめずに開発に奮闘しているのだろうか、まだまだ楽しみは続く。
了。

　好きな季節

人通りがない札幌市福井の深夜、屋根も木立もすっかり白く覆われている。この通りの明るさは街灯かと思って見上げると、月明かりだった。雪がしんしんと降るとは、まさにこの光景だ。休みなく雪が舞う銀世界に立っているだけで、私も詩人になれそうな気分になる。

翌朝、玄関を開けると、車が屋根まで雪で埋まっていた。お向かいの竹永さんが車の雪を払おうとしている私に、「1年に一度か二度、こういう雪の日があるんですよ」と声をかけてくれた。「車を雪から出したとしても、道路は動けないからね。こういう日は、皆んな仕事を休むんだ～」と、ここは北海道と強調するためか、わざわざ北海道弁のイントネーションを使って言う。「だめなのよ。事務所に行かないと。きょうは東京から出張者とのアポがあるし、人数が少ない事務所でだれか出ないといけないの」。最寄りの発寒駅まで、歩こうとしたが、腰まで雪がある。それではと、ちょうど目の前にいたタクシーに乗ったが、結局タクシーも雪で動けず、でも途中で降りたいと言い出せず、ただ散財しただけだった。本当だ、頑張っても空回りばかりだ。大自然の摂理に合わせて、人間は活動を停止するのが生活の習わしであることを学んだ一日だった。

冬の失敗は数知れずあった。中学生の３年間、札幌に住んだという妙な自信は、たちまち崩れ落ちてしまった。私の学校と友達中心の生活は、家族によって世話され、支えられていたのだった。それは当たり前すぎて、私の視界の片隅に押し込まれていた。

それでも、札幌の冬が忘れ難いのは、楽しい順境より、起伏の激しかった年月、泣きたかった日々の方が、乗り切ったと思えるのかもしれない。自分が落ち込んだときや慣れない時期を支えてくれた人たちの温かさは、より深く後々まで心に残る。

これが、私が札幌の冬が好きな理由なのだが、好きな季節はいきなり冬というより、その序章から始まる。秋の藻岩山周辺を、歩くときも、運転するときも、紅葉の鮮やかさに目を奪われる。寒暖の落差が激しい地の、紅葉の美しさはこれなのだと、感動を目に焼き付けようとする。眺めるうちに長い冬が待ち構える今にさようならするのは、ちょっぴり悲しくなる。

転勤１年目、藻岩の裾野に拡がる彩り豊かな自然林を眺めながら、私は悲しさと切なさを確かに味わった。なぜ、私はこんなにもの寂しいところにいるの？友達も多い大好きな北海道で、なぜこのような気持ちになるのかわからない。だからどんなに紅葉が美しくても、寂しい秋は好きになれないと思ったのに。

もの寂しい気持ちになっても秋が好きなのは、寂しさや悲しみで、人間の内面が深められていく錯覚や自己陶酔があったかもしれない。

札幌の秋と冬は素敵だった。

（了）

  美幌峠の思い出

現在では、北海道道東を代表する観光名所になっている美幌峠。北海道でサロマ湖についで大きい屈斜路湖を中心に、周辺の山々と湖の絶景が有名だ。屈斜路湖を挟んで美幌峠の東側対岸に有名な川湯温泉がある。屈斜路湖の近くには摩周湖や阿寒湖もあり、美幌峠からは観光客は釧路方面や網走方面に分かれて、北方の野生動物の生態系やバードウォッチングなどを楽しんでいる様子だ。

この美幌峠で、私は初めてヒグマの子を見た。１９６５年、東京から札幌に引っ越した初めての年、中学１年生の夏休みに家族全員で美幌峠を通って、釧路や網走まで５日間ほどの旅行をした時だった。美幌峠の高台に上り展望台はまだなかったが、それでも神秘的な湖と自然林の拡がりが目の前に現れて、世の中と遮断されたような静寂に浸った。そこは観光バスと重ならなかったためか、私たちの家族６人を入れても１０数人しかいなかった。美幌峠の頂きの入り口のところに、アイヌの人たちの土産物店が３軒ぐらい点在していた。その一つのお店の１０メートルほど離れたところに、木製の高いポールがあって子熊が一匹繋がれていた。気になりながらも、皆んなについて高台にいったあと、私は早めに子熊のところに戻ろうとして、まずお店に行って、アイヌの木彫りを作りながら売っているお兄さんに子熊の名前を聞いた。「アイタロウだよ」と言う声を聞くなり走り出して「愛太郎！」と呼んで近くにしゃがんで様子を観察した。絵やぬいぐるみで見るより、額のひろさやつぶらな目が愛くるしい。本州のツキノワグマとは違って、ヒグマは毛の色が少し茶色っぽいなと興味深々だった。知らず知らずに子熊との距離が近づいたが、もちろんすぐ手を出してなでたりはせず、私も用心深かった。それでもなんとかこの子熊と仲良くなりたいと思って、しゃがんだまま子熊と同じ高さから眺めていたその時、いきなり愛太郎は、私が手にもって膝においていた白いハンドバッグを「ガブッ」とくわえて、信じられない力で、バッグを噛んだまま私を引きずり込むように引っ張ったのだ。このめんこい子熊のどこにそんな狂暴な馬鹿力が潜んでいたのか、私も必死で引っ張っているうちに、子熊がくわえなおそうとしたタイミングに、はずみで運よくバッグが子熊の口からはずれた。私のバッグを噛んだときの振動は、もし私の手首を噛んでいたら手首がちぎれるほどの衝撃だった。子熊はバッグを食べ物だと思って欲しかったのだろうと思った。

長く感じたが、１分か２分に満たない綱引きと言うより格闘だった。見回すと周囲には誰もいなかった。これを人が見ていたら、この子熊は危険だと言い出す人が現れただろう。少なくとも鎖につなぐだけでは危ないとか、柵をつくれとか。

これからは、熊はどんなに小さくてもかわいくても、熊が食べ物が欲しいときには凶暴だと、私が気を付ければよい。中学生の私は、とっさにそのように判断して、お店の愛太郎の飼い主にも家族にも誰にも何も言わなかった。

その翌年、中学２年のときに、学校の修学旅行で再び道東の美幌峠、阿寒湖、摩周湖、知床五湖などに行くことになった。私も約１週間の旅行を、仲良しの友だちと同じ部屋になれるか、阿寒湖でボートに乗るかどうか、摩周湖は見られるかなど、先生や友だちと一緒に、家族旅行とは別の楽しさで大いに笑い、夜は遅くまでおしゃべりをし尽くした。日程の中盤で美幌峠を通りがかったときのことだ。１年前の美幌峠であった出来事を、私は以後忘れてはいなかった。ただ修学旅行中は、ある種の緊張感や興奮のためか、愛太郎を思い出したのは、次の行き先は美幌峠と屈斜路湖だと予定表を見たときだった。

愛太郎はどうしているだろうか？

「私はここを知っているから、先に行くわね」と言って、美幌峠で集合時刻まで自由になったわずかな時間、いつも二人でいる友だちから離れて速足で土産物店の方へと登った。２，３店舗ほどお店の数は増えていたが、見覚えのある木製のポールもあってそこには愛太郎らしき背中が見えた。ぐるりと走って正面に回ると、愛太郎だったが、はく製の愛太郎だった。緑の上着を着て、その横に「愛太郎」と書かれた木札が立ててあった。

１年前とほぼ同じ大きさだから、あれからすぐ何か事故を起こしたに違いない、とその時から長い間私はそのように確信していた。半世紀以上前とは言え、クマを鎖につないでおいて、危害を与えるようになったら、はく製にして飾るなんてひどいやり方だと、思い出しては悲しさと怒りに見舞われた。

しかし私は何度が北海道を往来するうちに、わかってきたことがあった。そもそも美幌峠一帯と道東もアイヌ集落があったところで、６０年代は開発が急速に進んだだ時期だった。１９６０年代、７０年代の北海道開発の途上でも、熊猟は北海道全域で、生活のために必要なときには行われていたことは知られている。現在よりも自然な生活のなかで熊は山や森のなかで暮らし、人間は山や森に入って熊を撃ち、それで生計の一助とする。子熊がそばにいるときは一緒に連れて帰える者もいて、できるところまで育てるが、所詮、野生動物は山や森で、親が教えたとおりでしか生存できない。

集落がだんだん近代化を強いられて、観光客相手に、美幌峠の木彫りのお土産店を始めたのだろう。アクセサリーの裏に、一つ一つの注文に応えて、名前を入れたり、イナンクル、コタン、カムイという言葉を彫っていた若者たちも、それだけでは生計はとてもたてられなかったに違いない。集落では熊猟は続けていただろうし、それは当然だろうと推測した。

今では、恐らくできるところまで育てようと、美幌峠で子熊に愛太郎と名付けていた飼い主は、私が子供のころに考えたほどひどい人間ではなく、むしろ当たり前の人間だったと思えるようになった。

了

  Fashionable Protective hats – Abonet

I often heard of fashion antenna stores located in Sapporo, Obihiro and other places in Hokkaido. Apparently, these areas are where apparel makers pay attention to the sales trends of their new products.
It is true that Sapporo is home to a relatively young and fashionable population, as well as people of all ages. Compared to the crowded Tokyo metropolitan area, it is easier to spot fashion people in Hokkaido where there’s appropriate amount of space per person.

Under severe cold weather, even in urban areas, it is normal for people to wear black top and bottom, and to do their best to survive the cold. When people from other northern cities in Honshu visit Sapporo and Obihiro, they are impressed by the colorful and fashionable clothing, even in winter, with some people wearing skirts.

I have always loved wearing hats and I loved that its’ presence in fashion is big in Sapporo. Hats are used not only for walking in the snow, winter sports, outdoor events, or to block out the summer sun, but also as a daily necessity. Actually, I found lovely hat shops in town and the hat sections at department stores with wide variety of designs and types.

There is an event in Sapporo, Japan, where I had high hopes for the fashionable flair associated with the hats.
Although the expansion of underground malls and road heating have been promoted as possible solutions to the dangerous situation of people getting injured on winter roads, infrastructure improvement still required huge amount of money and time. It seems to me that improvements can be made to prevent falls on winter roads, such as walking on icy roads with non-slip shoes and accessories, but there are no definitive solutions. There is also a “Sunabako” or, sand box. The idea is that each person takes out the anti-slip powder from the box and sprinkles it on the road before crossing the street, but it seems to me that the idea has been utterly exhausted. The powder is black or gray in color, and it is a pitiful way to gain safety while staining the white winter scenery that Sapporo prides itself on.

One day, I was at the hospital for an examination because I had taken a nasty fall and was feeling unwell the next day. There, I heard that the city of Sapporo had been working since around 2000 on the development of abonet; a hat that protects the head from falls. This had been ongoing for three or five years, with the goal of commercializing it. The city received strong consumer demand for a hat that provides safety and protection for the head and is also fashionable to be used on a daily basis. As one would expect, Sapporo citizens care about the fashionability of their hats even in the middle of winter.

When I later had a chance to meet staff of Sapporo city office, I asked them about abonet. They were in the process of devising a pattern together with the students from the city design school to see if they could add a frill to the brim of the hat. However, since the city is the owner of the avonette development, they wanted to cooperate with local vocational schools, research institutes, and design companies as much as possible and procure materials from local areas. The city’s intention to utilize local sources whenever possible is totally understandable, however due to this it seemed it would take more time to complete the project.

Shortly thereafter, a prototype of the “abonet,” a protective hat developed by the City of Sapporo, appeared in a local newspaper. At the time, the newspaper covered two prototypes, one for women and the other for men, and only the completed men’s version appeared with a photo. The model was the mayor of the city at that time, and the city was probably paying respect for the leader of the project.  Even if we look at it favorably, honestly speaking I felt a setback since it looked different from the safety caps I was used to seeing at construction sites. I hoped the women’s version, which seemed to be unfinished at the time, would combine safety with fashion.

Twenty years had passed since its development, and at this time, when my memory of it was becoming rare to recall, I was suddenly given an occasion to write about fashion. So, I tracked down abonet, and to my delight, it was still alive and had not disappeared. However, whether it is an appropriate subject for the theme “Regarding Fashion” is somewhat questionable. Despite the fact that the abonet was intended to be a fashion item, it was also functional and practical use, especially in the field of nursing care and as a safety helmet to prevent falls and other potential dangers.  It seems that it is still being improved and tested to satisfy the needs of both citizens and tourists. If in need of use, abonet is available at hat specialty and department stores in Hokkaido. It is also competing with other domestic and foreign safety hats on the Rakuten Ichiba and Amazon web shop platform.

Nowadays, Sapporo brand protective hats abonet is more fashionable and trendier than they used to be. It is trying to meet various needs for citizens, such as the aging population, nursing care, dangerous roads, and snowy mountains where skiing and snowboarding are more dangerous than the roads.
Still, I wonder if they are arduously developing something unpredictable or state of the art. The fun continues.

了　end

   Favorite season

In the first year of my transfer, as I gazed at the colorful natural forest spreading out at the base of Moiwa, I certainly experienced a sense of sadness and wistfulness. Why am I in such a lonely place? I did not know why I felt this way in my beloved Hokkaido, where I have many friends. So, no matter how beautiful the autumn leaves were, I thought I would never like the lonely autumn.

Perhaps the reason why I like autumn even when I feel lonely is that through loneliness and sadness, there was an illusion of deepening inner self and self-absorption. The autumn and winter in Sapporo were wonderful.

End

   Memories of Bihoro Mountain Pass

Bihoro Mountain Pass is now one of the most popular tourist destinations in the eastern part of Hokkaido. Centered on Lake Kussharo, the second largest lake in Hokkaido after Lake Saroma, it is famous for its spectacular views of the surrounding mountains and lakes. On the other side of Lake Kussharo, on the eastern shore of Bihoro Pass, is the famous Kawayu Onsen Hot Spring. Lake Mashu and Lake Akan are also located near Lake Kussharo, and from the Bihoro Pass, tourists mostlly seem to split off toward Kushiro and Abashiri to enjoy the northern wildlife ecosystem and bird watching.

It was 1965, the first year I moved from Tokyo to Sapporo, and during the summer vacation of my first year of junior high school, my whole family took a five-day trip to Kushiro and Abashiri via the Bihoro Pass. Although there was no observatory on the high ground of Bihoro Pass, the mystical lake and the expanse of natural forest appeared before us, and we were immersed in the silence as if we were cut off from the rest of the world. Perhaps it was because we were not overlapped by tourist buses, but there were only a dozen or so people there, including our family of six. At the entrance to the top of Bihoro Pass, there were about three souvenir stores of the Ainu people scattered around. About 10 meters away from one of the stores was a tall wooden pole with a bear cub tied to it. After following the others to the higher ground, I decided to return to the bear cub as soon as possible, so I went to the store first and asked the young man who was making and selling Ainu wood carvings what the cub’s name was. As soon as I heard him say, “It’s Aitaro,” I ran out and called out, “Aitaro!” and crouched down nearby to observe the bear. It was more adorable than in pictures or stuffed animals, with its broad forehead and cute round eyes. I was curious to see how brown coats are slightly brownish, unlike the black bears in Honshu. Unknowingly, I was getting closer to the cub, but of course I did not immediately put out my hand and pat him, and I was cautious as well. Still, I wanted to make friends with this baby bear, so I was squatting down and looking at it from the same height as the cub, when suddenly Aitaro “gulped” the white handbag I was holding in my hand and holding in my lap, and pulled me in with incredible force, as if he were dragging me in while still chewing on the bag. I wondered where such maniacal stupid power lurked in this baby bear, and as I struggled to pull, the bag was luckily dislodged from his mouth just as he was about to re-hook it. The vibrations from the bite on my bag were so strong that if it had bit my wrist, my wrist would have been torn off. I thought the bear cub wanted me to think the bag was food.

It seemed like a long time, but it was more of a fighting than a tug-of-war, lasting less than a minute or two. I looked around and saw no one around. If people had seen this, they would have said that this baby bear was unsafe. At the very least, they would have said that just chaining it up was dangerous, or that we should build a fence.

From now on, it would only be up to me to remind people that bears, no matter how small or cute, are ferocious when they want food. As a junior high school student, I made that decision on the spur of the moment and said nothing to Aitaro’s owner at the store, my family, or anyone else.

The following year, when I was in my second year of junior high school, I was again scheduled to go on a school excursion to the east of Hokkaido to visit the Bihoro Pass, Lake Akan, Lake Mashu, and the Shiretoko Five Lakes. I spent about a week of the trip with my teacher and friends, wondering whether or not I could share a room with my best friends, whether or not I could take a boat ride on Lake Akan, whether or not I could see Lake Mashu, etc. We laughed a lot and chatted late into the night with a different kind of fun than on a family trip.

I had not forgotten the incident at Bihoro Pass one year ago. However, perhaps due to a certain tension and excitement during the school trip, I remembered Aitaro only when I saw the schedule that the next destination was Bihoro Pass and Lake Kussharo.

I wondered how Aitaro was doing.

“I know this place, so I’ll go ahead,” I said, and in the short time I had free until the meeting time at Bihoro Pass, I walked away from my friend who was always with me and walked up to the souvenir stores at a quick pace. There were a couple more stores, but there was also a familiar wooden pole where I saw a back that looked like an Aitaro. I ran in a circle and turned around to the front, and saw that it was an Aitaro, but it was a stuffed Aitaro. He was wearing a green jacket, and a wooden board with the word “Aitaro” written on it was standing next to him.

He was about the same size as he had been a year earlier, so he must have had some accident soon after that, and for a long time from then on I was convinced of that. I was overcome with sadness and anger when I remembered, even though it was more than half a century ago, what a terrible way to keep a bear chained up and then display it as a stuffed animal when it came to harm.

However, as I traveled back and forth to Hokkaido, I came to understand something. The area around Bihoro Pass and East Hokkaido were also the site of Ainu settlements, and the 1960s was a time of rapid development. It is known that even in the 1960s and 1970s, when Hokkaido was in the process of development, bear hunting was still practiced throughout Hokkaido when it was necessary for subsistence. In a more natural way of life than today, bears live in the mountains and forests, and humans go into the mountains and forests to shoot bears to help them make a living. Some people bring the cubs home with them when they are around and raise them as long as they can, but after all, wild animals can only survive in the mountains and forests as their parents have taught them.

As the village was gradually forced to modernize, they probably started a souvenir store to sell wood carvings of the Bihoro Pass to tourists. The young men who carved the names and words Inankul, Kotan, and Kamui on the backs of the accessories, one by one, to customer orders, must not have been able to make a living doing just that. The village would have continued bear hunting, and I guessed that was to be naturally expected.

Now I have come to believe that the owner, who had named his cub Aitaro at Bihoro Pass to raise it as far as he probably could, was not as terrible a person as I had considered him as a child, but rather a natural human being.

end